過ぎ去りし日の記憶

かつて産炭地として繁栄を極めた、万字というマチ。
そこに一軒のラーメン屋さんがありました。
 

「小鳩ラーメン」
 
真っ黒になって働く炭鉱(ヤマ)の男たち。
そしてその家族に愛された、とても素朴で、そしてとても優しい醤油味のラーメンです。
 
今は、岩見沢市内の国道234号線沿いに移転し、「醤油屋」「おとん食堂」として、その味を守り続けています。
 


 
 

 
 

 
 
店内は、昭和30〜40年代の雰囲気をモチーフに飾られています。
静かに流れる懐かしいBGMと相まって、ノスタルジックな気分。
 
そして肝心のラーメンのお味。
透明な澄み切ったスープで「あっさり系」なのかと思いきや、極厚で脂身たっぷりのチャーシューがお出迎え。
そしてそのスープそのものも、コクが深くて醤油の旨みを存分に引き立ててくれます。
太く縮れた西山麺は「札幌風」であることを主張し、かすかに小麦の香りの感じられる固めの食感がなんとも絶妙。

 
スープの種類は、どちらも醤油ですが、普通のタイプと「萬字ラーメン」というさらに濃い目のタイプも選ぶことができます。私はどちらも好きですが、より深いコクと香りがお好みの方でしたら、後者の方をオススメいたします。
 

  
  
ちなみに、ラーメン以外のメニューも豊富で美味しいです。
これは五目あんかけ焼きそば。
 

 
 
 

時は流れ、21世紀の今。
国のエネルギー政策の転換により、空知の多くのヤマから、男たちは去っていきました。
かつては「黒ダイヤ」と持て囃され、数えきれないほど多くの犠牲を払いながらも、黙々と掘り出された石炭。
高度経済成長と空前の好景気に沸いたあの時代。石炭もその一役を担っていたのです。
危険と隣合わせの地下鉱脈で、それを掘り続けた彼らの存在はあまり知られていません。
 
 

もう既に、あの「ヤマ」は自然豊かな「山」に戻り、その面影は消えつつあります。
 
ですが、このラーメンにはその当時の記憶が受け継がれているような気がするのです。
ヤマに愛され続けたラーメン。
その味を、ぜひ。